日本国内で飼育されている犬には1年に一度の狂犬病の予防接種が法律で義務付けられています。
その一方で、混合ワクチンの接種は飼い主さんの自主性に任されています。
「確実な感染症予防のため」として、多くの動物病院で毎年の接種を薦めているので、年一度の混合ワクチン接種を習慣にしている飼い主さんも多いでしょう。
しかし、世界的には「主要な3種のワクチン接種は3年以上間隔をあける」という考えが一般的だということについてはあまり知られていません。
子犬からのワクチン接種
子犬は、母親から抗体を受け継いで生まれますが、生後8~12週で抗体レベルが低下していくため、感染症にかかりやすくなります。
そのため、人為的に抗体をつくるために混合ワクチンを接種します。
通常は子犬を家庭に迎える前にブリーダーまたはペットショップで最初の混合ワクチン接種を受け、以後は2~4週間隔で数回接種をおこなうことによって充分な免疫を確保します。
1歳以降は、年に一度、混合ワクチン接種をするケースが多いと思います。
混合ワクチンの種類
コアワクチンとノンコアワクチンに分類され、コア3種とノンコア数種を組み合わせて混合ワクチンとして接種します。
コアワクチン
世界中で感染が確認されている、致死性の高い感染症を引き起こすウイルスから守るもので、すべての犬に接種を推奨されているワクチンです。
①犬ジステンパーウイルス
②犬アデノウイルス
③犬パルボウイルス
ノンコアワクチン
地域の環境や飼い主のライフスタイルによって、リスクが生じる可能性がある感染症に対応するワクチンです。
カゼ症状を呈すパラインフルエンザウイルスや、呼吸器疾患を引き起こすボルデテラ症、ネズミの尿から感染して発熱や嘔吐、粘膜からの出血や黄疸などの症状があるレプトスピラ症などが知られています。
年一度の混合ワクチン接種は妥当なのか
世界小動物獣医師会(WSAVA)は2007年以降、コア3種のワクチンを、すべての犬が接種すべき「コアワクチン」と規定しています。
そのうえで、この3種については、1歳までに適切なワクチン接種をした犬であれば、強固な免疫を数年維持し、再接種には3年もしくはそれ以上の間隔をあけるべきとするガイドラインを発表しています。
WSAVAはコアワクチンの毎年接種を推奨していないのです。
副作用の一例
WSAVAによれば、混合ワクチン接種による副反応として、食欲減退、発熱、嘔吐や下痢、痒みやじんましん、顔が腫れる「ムーンフェイス」などのアレルギー反応が報告されています。
また、わずかですが、重篤なアナフラキシー症状のほか死亡例もあるそうです。
抗体検査によってわかること
日本国内でも必要のないワクチンを接種すべきではないという動きがあります。
ポイントになるのは、犬の体内に抗体が残っているかどうかを調べる抗体検査です。
検査キットを用意している動物病院であれば、採血をして早ければ30分~1時間程度で検査結果がわかります。
検査費用は1回あたり8千円前後というのが一般的です。
検査の結果、抗体が残っていることが判明すればワクチン接種は不要になり、「抗体検査証明書」が発行されます。
まとめ
抗体検査をしても混合ワクチン接種をしても、費用的にはほとんど変わりません。
もちろん抗体がないことがわかれば、あらためて混合ワクチンを接種する必要があるので費用は余分にかかりますが、ワクチン接種自体に意味がないのであれば、愛犬のストレスになる注射は避けたいところです。
これまで毎年混合ワクチン接種をしている飼い主さんにも、ぜひ抗体検査を検討して欲しいと思います。