犬の断尾(だんぴ)とは、犬のしっぽを根元もしくは中間部から切り落として短くすることです。
断尾には非常に古い歴史がありますが、現在でもなお多くの犬種で短い尾を持つことが理想的と規定され、断尾の対象になっています。
断尾の目的
断尾の歴史
ヨーロッパでは18世紀以前から断尾が狂犬病を予防し、筋力を強め瞬発力を増加させると広く信じられていました。
イギリスでは、ジョージ王朝時代(1714~1830)の頃に狩猟犬などのワーキングドッグ以外の愛玩犬に対して課税されたことから、節税目的で多くの愛玩犬が断尾されました。
断尾はワーキングドッグのシンボルだったからです。
その後、この税は廃止されましたが、断尾の慣習は残りました。
犬の機能や予防医学としての断尾
猟犬がしっぽを左右に振りながら深い茂みや藪の中を移動すると、とげの付いた植物などに接触して擦り傷をつくり、感染症にかかる危険性があります。
また牧羊犬は、家畜の群れを統率する際に牛やウマやヒツジにしっぽを踏みつけられてケガを負うかもしれません。
そのような実用面から断尾がおこなわれてきました。
また、しっぽは解剖学的に肛門の近くにあることから便がつきやすく、不衛生になるという側面もあります。
このようにワンちゃんの機能面や健康面から断尾がおこなわれてきたのです。
美容目的としての断尾
近年では狩猟犬の数も減ったため、実世的な理由から断尾をおこなうケースは減少しています。
しかしショードッグの世界には、犬種によってその理想的な姿を規定するスタンダードという基準があり、体型をスタンダードに合致させるために断尾がおこなわれています。
断尾がおこなわれている代表的な犬種
現在も断尾がおこなわれている代表的な犬種を紹介します。
牧羊犬グループ
ウェルシュ・コーギーペングローブ、オールドイングリッシュシープドッグ
狩猟犬グループ
アメリカンコッカ―スパニエル、プードル、ジャックラッセルテリア、シュナウザー
その他
ドーベルマン、ボクサー
断尾の今後
現在は動物愛護の立場から断尾に対して否定的な国も増えています。
ヨーロッパでは2006年にイギリスで狩猟犬(テリア種やスパニエル)を除くすべての犬種に対して断尾が禁止され、ドイツ、デンマークなどでも一部の例外を除いて断尾は禁止されました。
アメリカでは断尾は禁止されていませんが、動物愛護グループなどの運動が広がりつつあるといいます。
日本では法律による規制がないため、現在も断尾は一般的におこなわれています。
ただし、この現状を知る人は多くありません。
ウェルシュコーギーやミニチュアシュナイザ―、プードルのしっぽが短い理由が、断尾によるものだということを知らない人も多いのではないでしょうか。
個人的には狩猟犬などの実用面での必要がなければ、断尾は制限すべきだと思います。
なによりも、ワンちゃんに不要な痛みを与えることになりますから。
動物病院では、断尾の費用は2万円程度かかります。
悪質なブリーダーが自ら断尾をおこなうケースも後を絶たず、ワンちゃんを苦しませているという現状についても多くの人に知ってもらいたいと思います。