犬は人間のように器用に手を使うことができないので、何かにつけて口の中に物を入れることで対象を知ろうとします。
とくに子犬のころは好奇心もあって、いろんなものを口に入れて噛んでしまいます。
家具などをボロボロにしてしまったり、いくら子犬といえども、遊んでいるつもりで人を傷つけてしまう可能性があります。そこで必要になるのが、噛み癖のしつけなんです。
噛み癖のスタート
犬の乳歯は通常上に14本と下に14本の合計28本あり、生後3週目ごろから生え始めて約2か月で生えそろいます。
その後、4~5か月齢ころから乳歯が抜け落ち始め、7~8か月齢までに永久歯との入れ替わりが完了します。
子犬の乳歯が永久歯に生え変わる生後4~7か月ごろに噛み癖が始まります。
この時期を「歯牙脱換期(しがだっかんき)」といいます。
歯牙脱換期の子犬は口の中がむずむずするため、違和感を解消しようとして何でもいいから口に入れたがります。
椅子やテーブルの脚、テレビのリモコン、スリッパ、ゴミ箱のふた、電気コード、ベッドシーツ、毛布などです。
目の前を動いて狩猟本能を掻き立てやすい人の足、かかとや指、裾や袖といった服の一部、散歩用のリード、掃除機などもよく噛まれます。
この時期の子犬にとっては何かをガジガジと噛む事は自然なことで、むしろ必要なことなんです。
子犬に教えること
永久歯に生え変わる時期の子犬に教えるべきことは、家の中にあるものをかじらないにすることではなく、噛んでもいいものだけを噛むようにさせることです。
何かをかじらないようにしつけるのではなく、噛んでもよい物だけを口に入れるよううまく誘導してあげなければなりません。
しつけにおける重要なポイント
子犬が人間の手や袖を噛んでしまう場合は早急にしつけ直しが必要です。
人間の手を噛んでしまうことの背景には多くの場合、「手を使って子犬をあやしてきた」という人間の側の重大なミスが関わっています。
子犬の噛み癖をしつける時に重要となってくるのが一貫性です。
家族で犬を飼っている場合、家族の全員が同じ方針で子犬と接する必要があります。お父さんの手に甘噛みするのは駄目だけれども、お母さんの手ならOKとか、抱っこされているときならOKというのはダメなパターンです。
どんなケースでも「絶対に人間の体に歯を当ててはいけない」という基本方針を貫かなければなりません。
間違ったしつけの例
手にじゃれついて噛んできたワンちゃんの鼻を指先でピンと弾いたとします。
あるいは噛み付かれた部分が思いのほか痛く、反射的に犬の顔に平手打ちをくらわせてしまったとします。
すると犬は「人間の手は怖い!」と学習し、以降自分の顔に近づいてくる手に反射的に噛みつくようになってしまう場合があります。
「ほめて伸ばす」が正解
したがって、犬の噛み癖をしつけ直す時は、叱ったり体罰を与えるのではなく、正しい行動に対してごほうびを与えて伸ばしてあげるのがポイントになります。
ごほうびはおやつだけでなく、ほめてあげることや、おもちゃを与えることも有効です。
「人間の手なんかよりもはるかに面白い!」と思わせるために、魅力的なおもちゃをなるべくたくさん用意しておきましょう。
しつけは最初が肝心です。
歯牙脱換期に放任状態にしてしまったことで、それ以後なかなか噛み癖が直らないワンちゃんもいるようです。
家の中はボロボロになってしまうし、屋外でのトラブルの可能性もありますから、成犬になったのちでも、もう一度粘り強くトレーニングをしてみてはどうでしょうか。