自然界では急激な気温の寒暖が起こることはなく、朝日が昇ってから夕陽が沈むまでの間に、ゆっくりと時間が流れ、気温が上下動します。
本来、犬の体はそのような自然界の寒暖に対応できる仕組みをもっています。
しかし、室内生活が当たり前になった犬達の体には、快適さと引き換えに変化が起きています。
今回は、ペットのワンちゃんにも起こる可能性があるヒートショックについて解説します。
生活環境の影響
クーラーや暖房の効いた室内飼育の環境によって、犬の被毛に変化が起こっています。
春と秋にあるはずの換毛期が曖昧になり、年間を通じて常にまばらに抜け毛があるなど、自然界と体毛の変化の周期との間にギャップが発生しているのです。
また、寒がりの犬が増えていることから、冬の温度変化への対応能力が低下しているとも考えられます。
ヒートショックとは
急激な温度変化によって、血圧が急激に変化してショック状態に陥る症状をヒートショックといいます。
ヒートショックは暖かい場所から寒い場所への移動によって発生するケースが多く見られます。
人間の場合は、とくに入浴時に発生しやすく、脳卒中や心筋梗塞などで突然死する事例も多数報告されています。
入浴時の事故のメカニズム
暖かい部屋から寒い浴室に移動して服を脱ぐと、人間の体は冷たい室温から体を守るために、ブルブルと筋肉を震わせて熱をつくります。
それと同時に、血管を細くして皮膚の下に流れる血液の量を減らし、体の熱を外に逃がさないように調節します。
血管が縮むと血液が流れにくくなるので、血圧は急上昇します。
その後、浴槽の温かい湯につかると血管は拡張して血圧が急上昇し、浴槽から出て着替える段になると、今度はまた血管が収縮して血圧が急激に低下します。
このように、血圧の急激な乱高下が起こることによって、心筋梗塞や脳梗塞、脳出血が発生する危険があるのです。
犬のヒートショック
ヒートショックがペットにも発生しうる現象だということは、あまり知られていません。
急激な温度差により、人間と同じように動物も心筋梗塞などを起こす危険があります。
人間の場合では、ヒートショックが発生する危険な温度差は10℃前後だといわれていますが、犬の場合についても同じ程度であると考えておいていいでしょう。
子犬、高齢犬、持病がある犬、肥満体型の犬などにはとくに注意が必要です。
ヒートショックで気をつけておきたいシチュエーション
犬のヒートショックでもっとも気をつけておきたいのは冬場の散歩ですが、かならずしも冬特有の事象とは限りません。
暑い時期に冷たい水に飛び込んでヒートショックが起きる場合もあります。
ヒートショックの症状
突然の嘔吐、ふらつき、眼振(眼球の異常な動き)、チアノーゼ、体温上昇、呼吸困難、意識障害などが主な症状です。
散歩から帰宅した直後に、心筋梗塞を起こして急死するケースも少なくありません。
ショック状態から貧血状態に陥るケースが多く、その場合は歯茎や舌が白っぽくなっていることがあります。
貧血状態かどうかを確認するためには、普段から健康な状態での歯茎の色をチェックしておくといいでしょう。
冬の散歩の注意点
散歩に出かけるときは、温かい部屋からいきなり外に出るのではなく、少し涼しくなっている玄関ドアの前でしばらくワンクッション置いてから外に出ましょう。
外出前の準備運動として、ワンちゃんにマッサージをして体を温める方法もあります。
ほんの少しのマッサージでも、交感神経が刺激されて、温度変化に対応しやすくなります。
まとめ
人間同様、ペットのワンちゃんにもヒートショックが起こる危険があることがわかりました。
急激な温度変化が起きないような環境づくりをして、犬も飼い主さんも一緒にヒートショックのリスクを少なくしていきましょう。