股関節形成不全は大型犬のブームに伴い、かなり発症頻度の高い病気となっています。
とくにゴールデン・レトリバーとラブラドール・レトリバーに多く認められています。
大型犬に発症しやすく、体重12キロ以下の犬はほとんど発症せず、まれに小型犬で発症したケースでも、ほとんどは症状が軽いそうです。
発症の仕組みと症状
股関節形成不全は股関節の発育や成長に異常が見られる疾患で、通常は両後脚に発症しますが、まれに片側性(片脚だけ)に発症します。
発症すると関節が不安定になり、股関節の炎症が起こります。
この病気は遺伝的(先天的)要因が大きいと考えられていますが、症状の経過については、栄養や運動などの環境も関係しています。
早期には5~8カ月齢の幼齢犬に発生しますが、普通は6カ月~1歳半頃から痛みを訴えはじめ、幼齢犬の多くは片側性で、突然発症するのが特徴です。
歩くときに腰がフラフラしたり、後肢をそろえて跳ぶような動作をしたり、階段の昇降を嫌がり、散歩をしてもすぐに座ってしまうといった症状があります。
後肢を伸ばして座るようなだらしのない座り方をするのが特徴です。
若いワンちゃんの場合は、成長にしたがって自然に改善される場合もありますが、放置して悪化するケースが多いので、ワンちゃんの行動に異常がみられた場合には、かならず獣医さんに相談しましょう。
さまざまな治療法
多くのワンちゃんは慢性的な痛みの症状を示さず、間欠的に症状を示すことが多いようです。
痛みが表れた場合は、痛み止めの投与によって一時的には処置できます。
重症の場合は痛み止めの投与や運動の制限のみではあまり効果はなく、外科手術がおこなわれることになります。
現在、股関節形成不全の手術で最も広くおこなわれているのは大腿骨頭切除術です。
大腿骨の骨頭を切除して、痛みを和らげる方法で、体重が20キロ以下のワンちゃんに対しては、かなりよい結果が期待できますが、体重の重いワンちゃんには、効果は大きくありません。
4~8カ月齢の若いワンちゃんであまり症状がひどくない場合は、恥骨筋切除術や、骨盤の3カ所を切る骨盤骨切り術と呼ばれる方法が少しずつ普及しつつあります。
また最近では人工骨頭を使用する「大腿骨頭全置換術」と呼ばれる方法が、まだ症例は少ないですが、日本でもおこなわれつつあります。
遺伝と病気の関係性
医学雑誌によると、両親が股関節形成不全の場合、その病気をもたないで生まれる子どもの確率は7%に過ぎないという報告があります。
両親が股関節形成不全の場合は、ほとんどのパピーが先天的な疾患をもって生まれてくるのです。
結局は、遺伝的な欠陥を排除することによって、あらたな股関節形成不全のパピーを生まないことが、この病気に対する根本的な解決策になるわけです。
そのためには、股関節形成不全のワンちゃんや、両親や兄弟犬がこの病気を発症しているワンちゃんは、交配させないようにすることが重要です。
予防にまさる治療方法はありません。
病気と食事の関係について
大型犬の場合、体が急に大きくなるのだから、栄養価の高い高カロリー食をどんどん食べさせ、なおかつカルシウム不足にならないように、カルシウムを添加するということがおこなわれていました。
ところが、カロリーを与えすぎるとワンちゃんを肥満させてしまい、そのために股関節形成不全が発症しやすくなったり、悪化が早まってしまうことがあります。
大型犬だからといって、カルシウムを与えすぎるのも、かえって骨の成長によくありません。
現代のワンちゃんは、栄養過多の状態にあるといえます。
また、残念ながら、何らかの薬や食物によって股関節形成不全を予防できるという報告は現在のところありません。
遺伝的な原因で疾患をもって生まれたワンちゃんに対しては、飼い主のきめ細かなフォローで発症を抑え、悪化しないように気を配ってあげなければなりません。
股関節形成不全のワンちゃんの症状をやわらげるためには、食事と運動をいかにうまく組み合わせるかということが問題になります。
同じ親から生まれても、生後8週間目から食事制限をしたパピーは、自由に食べさせたパピーより、股関節形成不全の発生がずっと低く抑えられたという報告もあるのです。
体重管理が重要
食事については、まず、理想体重を決め、カロリーを考えます。
純血種であれば、理想体重表を用いてください。
理想体重が決まったら、それに対する必要カロリー量の60~70%を与えます。
フードは数回に分けて与え、2週間ごとにワンちゃんの体重を測定します。
ワンちゃんが理想体重に到達したら、カロリーはその体重を維持するのに必要なだけ与えます。
続いて運動については、理想的な運動量は痛みが出る直前で止める程度がよいといわれています。
初めは、短時間の運動をゆっくりと少しずつおこない、運動量を徐々に増やしていきます。
ワンちゃんを暖かい環境におくと、痛みをいくらか軽減させことができます。
寒い冬の時期には症状が悪くなる傾向がありますから、寝床は柔らかい厚手のものを利用するとよいのです。
まとめ
愛犬の股関節形成不全の症状をやわらげるためには、まずは獣医さんに相談することです。
そして日々の生活で一番大切なことは、飼い主が食事と運動のバランスを考えてあげることですよね。
食事については、容量をセーブして、消化の悪いドックフードや添加物の入っているフードを与えないようにしたいものです。
人間でも消化の悪い食べ物や添加物の入っている物を食べてばかりだと、臓器に悪影響を与えてしまいますが、犬にとっても同じことなんです。