「ねこの魚好き」というイメージは、日本では昔から多くの方が思い描いているねこの姿です。
しかし、これは本当なのでしょうか?
ネズミを捕るという習性からもわかるように、すべてのねこが特別魚を好んで食べているというわけではないのかもしれません。
ねこは魚が好き?
本来、水が苦手なねこは自ら魚を捕獲することはなく、人間が与えなければ食べる機会はありませんでした。
日本のほか、海外の漁村にも魚を食べるねこがいるようですが、むしろ大多数のねこは魚を食べたことがないでしょう。
つまり、魚か肉かという好みの問題ではなく、国や地域の文化によって、ねこの食習慣が異なるということなのです。
ねこに刺身を与える場合の注意点
結論からいえば、ほとんどの刺身は与えても問題はありません。
ただし、いくつかの注意点があります。
一度に多く与えない
刺身を主食のように与えると栄養が偏り、ビタミンが不足しがちになります。
あくまでもおやつやトッピングとして、少量にとどめるようにしましょう。
ワサビや醤油に注意
刺身に添えてあるわさびや醤油に注意しましょう。
刺激臭のあるわさびは自分から避けると思いますが、醤油は舐めてしまうことがよくあります。
醤油の塩分はねこの体にあまりよくありません。
ねこに与えてはいけない刺身もある
そのほか、ねこに与える際に注意しておきたい刺身をいくつか紹介します。
貝類の内臓
貝類の内臓を食べると光線過敏症という病気になるリスクがあります。
アワビやサザエの消化管の中には、食べた海藻の葉緑素が分解された物質が蓄積していて、
この物質を食べると耳が炎症し、赤く腫れて痒みや痛みの症状が出ることがあります。
アワビやサザエを与えることはないと思いますが、念のため、貝類は避けた方がいいでしょう。
青魚(アジ、サンマ、イワシ)
青魚を主食として与えないように注意しましょう。
これらの魚に含まれる不飽和脂肪酸が皮下脂肪組織に炎症を及ぼし、しこりのように硬くなって発熱や痛みが生じることがあります。
この症状をイエローファット(黄色脂肪症)といい、症状が悪化すると不自然な歩き方をし、触られるのを嫌がるようになります。
また、青魚を常温で放置すると、アレルギーの原因となるヒスタミンが蓄積され、ねこが食すると下痢、嘔吐、じんましんといった食物アレルギー症状が生じます。
ヒスタミンは煮ても焼いても分解されないので注意が必要です。
また、青魚に寄生しやすいアニサキスは、ねこにも害を及ぼします。
生のイカやタコ
生のイカやタコには、ビタミンB1を分解するチアミナーゼという酵素が多く含まれていて、多く摂取するとビタミンB1が欠乏することがあります。
ねこは犬よりもビタミンB1を多く必要とするため、より症状が出やすいとされています。
食欲低下や吐き気、体重の減少のほか、重症化するとフラフラするなどの神経症状がみられるようになります。
生のエビ・カニ
甲殻類の肝臓には毒素が含まれています。
ねこが生のまま口にすると嘔吐や下痢を引き起こすことがあるので、与えてはいけません。
しらす、にぼし、わかめ、海苔
刺身ではありませんが、塩分が強いこれらの食材を継続的に与えると腎臓に負担がかかるほか、尿石症の原因になります。
塩抜きをしたにぼしは少量であれば問題はありませんが、リンやマグネシウムが多く含まれているため、継続して与えると、やはり結石ができやすくなります。
同じように、わかめや海苔のミネラル分も結石のリスクを高めます。
まとめ
マグロや白身魚の刺身は、少量であれば与えてもかまいません。
少量というのは人間の一切れの1/4ぐらいの量です。
イエローファットやビタミンB1欠乏症のリスクについては、毎日主食として継続的に与えない限り、大丈夫だと思います。
ねこの味覚は塩分に対して鈍感です。
「これは自分にはしょっぱすぎる」というように判断することはありません。
魚の干物やちくわ、塩鮭などは、塩分やミネラル分が過剰に含まれているので与えないようにしましょう。