ワンちゃんを屋内で飼育することが主流になり、人間との距離が狭まったことで本来うつるはずのない病気が人間に感染する事例が増えています。
動物から人間へ感染する病気を人畜共通感染症といいます。
犬やねこ、鳥や爬虫類など、さまざまなペットを通じた感染症が知られていますが、今回は代表的な犬由来の人畜共通感染症を紹介します。
犬から人間にうつる病気
パスツレラ症
パスツレラ菌は犬やねこの口腔内に常住する菌です。
人間が犬猫に噛まれたりひっ掻かれたりすると、皮膚に湿疹や腫れが生じることがあります。皮膚の腫れのほか、パスツレラ菌が体内に入り、気管支炎や肺炎などを起こす場合もあります。
レプトスピラ症
飲み水などから直接人間に感染するほか、犬が屋外活動でネズミの尿に汚染された水や土壌に触れて菌を持ち込み、人間に経口感染させる可能性がある危険な感染症です。
レプトスピラ菌は感染力が強く、過去には国内で年間50人以上の死亡例も報告されているほか、現在でもアウトドア関連の従事者の感染例を散見します。
発熱、筋肉痛、結膜炎のほか、重症化すると黄疸や血尿なども生じ、場合によって重篤な病状に陥ることがあります。
狂犬病
日本では1956年以来狂犬病の発症はありませんが、海外では注意が必要です。
発病した犬に噛まれると20%以上の人が感染し、発症すればほぼ100%死亡します。
飼い犬の狂犬病予防接種は必ずしてください。
エキノコックス症
感染したキタキツネの糞便中に排泄された虫卵が人の口に入ると、長い年月をかけて成虫が増殖し、肺不全や肝機能障害を起こします。
野ネズミを捕食するキタキツネの多くはエキノコックスのキャリアで、キツネと同様にイヌがネズミを捕食しても感染します。
国内では北海道がおもな発生地ですが、昨今は飼犬の移動によってエキノコックスは本州にも持ち込まれています。野犬がエキノコックスに罹患していたという報告もあります。
ブルセラ症
感染源はブルセラ菌を保菌する動物の乳や血液、尿、胎盤や膣排泄物、流産胎児などがあります。
ブルセラ菌の感染力は弱いので、通常の生活では人間への感染はまれですが、感染した場合は発熱や悪寒、倦怠感など、風邪に似た症状を示します。
犬猫回虫症
回虫で汚染された水を飲んだり生肉を食べることで人に感染しますが、回虫に汚染された犬猫のトイレの砂や、ペットの体毛に付着した回虫卵が誤って口に入って感染するケースが考えられます。
回虫は人の体内を迷入して定着し、肝臓の腫れや発熱、視力障害などの神経症状を発症します。
Q熱
コクシエラ菌に感染したペットの糞便などを通して人に感染します。
Q熱キャリアの動物の羊水には病原体が含まれているため、出産時に母子感染することがあります。
人間の場合、感染してから発症するのは50%程度です。
初期には倦怠感を示し、肺炎やインフルエンザに似た症状を示します。
皮膚糸状菌症
犬猫、ウサギやハムスターなど齧歯類からうつるカビの一種で、人間の皮膚に感染すると湿疹や水疱から円形脱毛を呈し、リング状に広がります。
湿気を好む菌なので、清潔な環境と皮膚の乾燥を保つことが大切です。
人畜共通感染症の予防
ペットと過度なスキンシップをしないことが最大の対策になります。
口移しで食べ物を与えたり、手から与えることはやめましょう。
手洗いを励行し、生肉の摂取は避けて必ず熱処理したものを食べるようにしましょう。
ペットの糞便やトイレの周囲を清潔にするように常に心がけて、家族を動物由来感染症から防ぎましょう。