ペットフードの安全性の確保を図るため、2009年6月1日に、「愛がん動物用飼料の安全性の確保に関する法律」(ペットフード安全法)が施行されました。
法律の対象となるのは犬及びねこ用のペットフードです。
これにより、ペットの健康に悪影響を及ぼすペットフードの製造、輸入又は販売は禁止され、製造業者名や賞味期限などの表示が義務付けられることになりました。
これまでの日本のペットフード事情
日本では長年、ペットフードは法律上、「食品」や「飼料」とは認められていませんでした。
そのため、ペットフードの安全面に関しては業界団体(ペットフード公正取引協議会)の自主規制に頼りきりという現状にありました。
よく考えると大変怖いことで、極端な話をすれば、ペットフードのラベルに何を記載しても罰せられないし、どんな材料や添加物を使ってもいいことになります。
法律制定の経緯
2007年3月、アメリカで有害物質メラニンが混入したペットフードが原因で、多数の犬猫が死亡する事件が発生しました。
死亡した数は犬2200匹以上、ねこ2000匹以上にのぼります。
その原因は、中国産原料の小麦に含まれていたメラミンやシアヌル酸であり、これらの毒物がペットに腎障害を引き起こしたためであるといわれています。
同年6月には日本に輸入されていたペットフードにもメラニンが混入していることが判明し、農林水産省と環境省が合同で研究会を発足して協議を重ねました。
その2年後には法案が成立してペットフード安全法が交付され、野放し状態だった国内のペットフードの規制がようやくスタートしたのです。
法律の目的
ペットフード安全法のおもな内容は次のようなものです。
1.犬猫用ペットフード等の製造方法及び成分について規格を整備する 2.規格に合わない製品や有害物質を含む製品を製造禁止もしくは廃棄等を命じる 3.製造業者の届け出を義務づける
この法律の遵守を徹底するため、ペットフードの製造者や輸入業者は、国への届け出が義務化されることになりました。
ペットフードのパッケージにも、必ず事業者名が記載されています。
また、原材料の調達や製造、流通の追跡を確保するため、製造、輸入、販売だけでなく試供品として配ったペットフードの名称や数量を帳簿に記載することを義務化しています。
ドッグフード、キャットフードだけでなく、おやつやサプリメント、飲み物や犬用ガムなども、この法律の対象となります。
残念ながら抜け穴もある
ペットフード安全法には心配な点もあると指摘されています。
1.原材料に含まれる添加物の表記義務がない 2.原産国表記は最終加工した国とする(最終工程が国内なら国産表記が可能) 3.一部の添加物の規制基準が甘い(エトキキシン、BHA、BHTなど) 4.不正業者への罰則規定がない
ペット先進国の西欧には、人間同等の食品基準が求められている国があり、厳格な罰則が設けられている国もあります。
今後は、日本においても外国並みのさらなる法整備が求められるところです。
まとめ
ペットフード安全法の不正抑止力には力不足であり、この法律はまだ不完全です。
しかし、この法律の成立によって、国内のペットフードはようやく安全性の第一歩を踏み出したともいえます。
多くの飼い主さんには、商品の値段やキャッチコピーだけで判断するのではなく、本当に安全なペットフードを選ぶきっかけにしていただけるといいと思います。