日本ではあまり馴染みがありませんが、「ピクシー(小さな妖精)」と名づけられたピクシーボブは名前の通りのとても愛らしいねこです。
被毛の色はブラウンタビーが基本で、ヤマネコのようなスポット柄が特徴的です。
大型の猫種で、標準体重は4~8kg、オスは時に10㎏になる子もいます。
ピクシーボブは鳴き声にも特徴があります。
普通のねこのように「ニャーオ」とか「ミャー」とは鳴かずに、「チッチッ」と鳥のような高い声でささやくように鳴きます。
ピクシーボブの歴史
1985年の春、アメリカ・ワシントン州に住んでいたキャロル・ブリュワーというブリーダーが、カナダの山中で知人が見つけたという短い尾(ボブテイル)のオスねこを譲り受けました。
続けて保護したもう1匹のオスも、ボブテイルでした。
キャロルはルーツとなる2匹のボブテイルのオスねこをボブキャット(ヤマネコ)の血統であると信じていたようです。
キャロルはボブテイルのねこと地元のメスを交配させて、そのなかからピクシーボブの原型となるねこが誕生しました。
ピクシーボブの性格
犬のように献身的で社会性が高く、ほかのペットや子どもとも仲良くできます。
人間の言葉を理解するといわれていて、知的で洞察力にも富んでいます。
その一方で嫉妬心が強く、飼い主さんには、常に自分に注目し、愛情を独占することを望みます。
ピクシーボブに非常に多い病気
ピクシーボブを作出するために多くの雑種のねこを交配させたため、純血種に頻出する遺伝性疾患が少なく丈夫なねこです。
ただし、一般的にねこによくみられる疾患については注意が必要です。
慢性腎臓病
腎臓の機能が長期間にわたってゆるやかに低下していく病気で、高齢のねこに多く見られます。
代表的な症状として体重の減少、食欲不振ですが、初期の変化は緩やかでなかなか気づきにくいものです。
多飲多尿の症状が見られたら要注意です。
病状が進行すると老廃物や有害物質を排泄できなくなり、やがて致死的な尿毒症を起こします。
知らないうちに病状が進行していることが多いので、定期的な健康診断の受診をおススメします。
一度壊れた腎臓は元に戻ることはありませんが、早期発見により投薬と食事療法で進行をおさえることができます。
尿石症
腎臓から尿管、膀胱、尿道の中に結石ができる病気で、結石は膀胱や尿道を傷つけたり、尿道に詰まることがあります。
食事の内容とともに、ねこがもともとあまり水を飲まずに濃度の濃いオシッコをすることが原因のひとつで、ねこ自身の体質の影響も大きいです。
尿道に結石が詰まると尿が出なくなる尿道閉塞が起こり、命に関わる危険な状態を呈します。
結石の種類や大きさによって対応は異なりますが、食事療法から摘出手術までさまざまです。
再発しやすい病気なので予防が大切です。
食事の内容の見直しや、ねこがオシッコを我慢することがないようにトイレ環境の整備も考えましょう。
甲状腺機能亢進症
甲状腺機能亢進症は甲状腺ホルモンが過剰に分泌される病気で、高齢のねこが発症しやすいといわれています。
異常に活発になる、落ち着きがない、食欲が増進する、攻撃的になるなどの症状のほか、大きな声で叫ぶような鳴き方をし、夜鳴きもみられます。
一般的には、内服薬や療養食による内科的治療と、甲状腺を摘出する外科的治療があります。
なお、甲状腺機能亢進症を発症している場合は、心疾患や腎不全など、ほかの疾患を併発しているケースが多いといわれています。
ピクシーボブの多指症について
ねこは基本的に前脚の指は5本、後ろ脚の指は4本ですが、一般的に多指症のねこには、前脚の親指と人指し指の間に6本目の小さな指があります。
多指症は遺伝性ですが、病気ではありません。
ピクシーボブは繁殖のために多指症のねこが多く使われたことから発生率が高く、50%の確率で多指症の個体が生まれるといわれています。
まとめ
ピクシーボブはヤマネコのような野性味あふれるワイルドな外見をしていますが、見た目とは裏腹に温厚で飼い主さんに忠実で賢いねこです。
丈夫で飼いやすい猫種なので非常に魅力的ですが、日本ではまだ希少種で、取り扱っているペットショップやブリーダーもほとんどないようです。
作出者のキャロルは、ピクシーボブはヤマネコの血を引くと考えていたようですが、残念ながらのちのDNA検査ではヤマネコの遺伝子は検出されず、その説は否定されています。