町中でよく見る、家の前のねこよけ対策のペットボトルのことを、一部では「猫水」というのだそうです。
しかし、この対策は効果がないばかりでなく、町の景観を損ね、場合によっては危険なケースもあるというのです。
今回は、なぜ猫水の都市伝説が広がったのか、そのルーツを解説します。
ペットボトルにねこよけ効果はない
水入りのペットボトルに、ねこよけの効果があるといわれ始めたのは1980年代のことです。
水に反射するキラキラした光をねこが嫌がるので、庭や塀に近づかなくなるといわれていました。
テレビや新聞で紹介されたこともあって、猫水の情報は全国的に広まり、日本各地の庭や塀の上に、水の入ったペットボトルを並べる光景を目にするようになりました。
結論からいえば、猫水にはねこよけ効果はありません。
個人的にも、実際にねこがペットボトルを避ける場面は見たことがありません。
ペットボトルのデマのルーツはニュージーランドにあった
カリスマ庭師エイン・スカロウ
1980年代半ば、ニュージーランドのカリスマ庭師エイン・スカロウ氏が、あるラジオ番組で語った、「水を入れたペットボトルを庭の芝生の上に転がせておくと、犬がオシッコやウンチをしに来ないよ」という情報が猫水のルーツです。
「カリスマ的存在のスカロウの情報は本当に違いない!」
ラジオを聞いていた多くのリスナーたちはこぞって水入りのペットボトルを庭に並べはじめ、ニュージーランドの住宅地では日を追うごとにペットボトルが増えていきました。
この情報はエイプリルフールだった
ラジオでスカロウが話したのは4月1日のこと。
つまり、エイプリルフールだったのです。
しかし、時はすでに遅し、スカロウのジョークは海を越えてオーストラリアに渡りました。
こうなるとデマの勢いはもう止まらず、アメリカ、イギリス、カナダ、インド、そして日本へと世界中に広まっていきました。
1986年10月には、アメリカ・サンディエゴの新聞に「水入りのボトルは犬を近寄らせない」と書かれたこともあるそうです。
ところが日本では
やがてブームは去り、海外の庭先でペットボトルを見ることはなくなりましたが、日本の「水入りペットボトル」のデマは、犬よけではなく看板をねこよけに替えて、30年以上たった今でも一部の人びとに信じられています。
海外のメディアにも「日本へ行くと、道端に多くのペットボトルが置かれている」と紹介されるくらい、猫水神話はバリバリの現役なのです。
効果がないと知りつつ、お守り程度の気持ちで置いている人も多いのでしょうが・・・。
ペットボトルを放置するのは危険
ペットボトルの丸みをおびた部分が凸レンズになって太陽光を一か所に集め、近くにある可燃物を燃やす危険があります。
これを「収斂(しゅうれん)火災」といいます。
東京消防庁のホームページによると、収斂火災は陽射しが強くなる時期や太陽が低くなる冬場に多い現象であり、その原因として、鏡やメガネなどのほかに「水入りペットボトル」が明記されています。
常識で考えればわかること
ペットボトルが危険物ではないことぐらいねこでもわかります。
ねこにとってペットボトルは、石ころと同じ、ただの「物」にすぎません。
しかし猫水の効果を信じる一部の人びとが、あちこちにペットボトルを置き続けているのは紛れもない現実です。
そもそも、ねこがキラキラする光を嫌がるのであれば、夜間は効き目がありませんから、夜行性のねこへの対策としては、まったくの無力ですよね。
まとめ
ペットボトルが家の周りに並べてある家は、訪問販売の営業マンにマークされやすいそうです。
デマを信じやすい人が住んでいると思われるのでしょう。
充分にお気をつけください。