カタツムリやナメクジは植物を食い荒らす害虫であると同時に、実はワンちゃんにとって非常に危険な生き物です。
今回は飼い主として愛犬を守るためにも、カタツムリの危険性を学んでいきましょう。
危険生物カタツムリ
犬がカタツムリやナメクジを口にしてしまうと、寄生虫に感染する恐れがあります。
蚊がフィラリアを媒介するように、カタツムリやナメクジも寄生虫を媒介します。
カタツムリやナメクジが媒介するのは、広東住血線虫(かんとんじゅうけつせんちゅう)という寄生虫です。
アフリカマイマイと広東住血線虫
広東住血線虫は、ドブネズミやクマネズミなどを最終宿主とし、カタツムリやナメクジを中間宿主(幼虫が寄生する宿主)とする寄生虫です。
なかでもアフリカマイマイという東アフリカ原産の大型のカタツムリが重要な中間宿主になりやすいとされています。
本来アフリカマイマイは日本には生息しない生物です。
しかし昨今、沖縄や小笠原諸島・奄美群島などに定着し農業被害が報告されています。
また、日本固有種のカタツムリやナメクジにも広東住血線虫の汚染が広がっている可能性も指摘されています。
広東住血線虫のライフサイクル
広東住血線虫の成虫はネズミの肺動脈で成虫になります。
広東住血線虫に感染したネズミが糞と一緒に幼虫を排出しその糞をナメクジやカタツムリが食べて中間宿主となり、それをまたネズミが食べて成虫になるというサイクルを繰り返しています。
犬に寄生すると
犬が誤ってカタツムリやナメクジを口にしてしまうと、分泌物に潜んでいる広東住血線虫の幼虫が犬の体内へと侵入します。
幼虫は神経や血管に入り込み、体中を巡り、臓器などに定着すると炎症を引き起こします。
オーストラリアでは臓器不全症による犬の死亡事例が多く報告されていますが、原因は散歩中のアフリカマイマイの誤食によるものです。
人間に感染することもある
中間宿主を触った手を口に入れたり、キャベツやレタスに中間宿主が付着していることに気づかずに食べてしまったりして、まれに人間が広東住血線虫に感染する可能性があります。
人体に侵入した幼虫は、脳や脊髄の血管や髄液に寄生して髄膜脳炎の症状を引き起こし、運悪く重症化すると、死に至ることもあります。
オーストラリアでは冗談でナメクジを食べて広東住血線虫に感染した男性の死亡例があるほか、2000年には沖縄で7歳の女児が広東住血線虫による髄膜脳炎で死亡するという痛ましい事件が発生しました。
カタツムリ以外の野生動物も危険
カタツムリとナメクジ以外の陸貝や水棲の巻貝も広東住血線虫の中間宿主になる可能性があります。
カニ、カエル、トカゲ、ヒルなどは待機宿主(幼虫が成熟もしないまま留まる状態)になり、いずれも犬や人間への感染源となり得るほか、日本国内のドブネズミも広東住血線虫を保有しているといわれているので、カタツムリ同様、注意が必要です。
まとめ
愛犬を寄生虫から守ることができるのは、一緒に散歩している飼い主さんだけです。
寄生虫が愛犬の体内に侵入しないように防ぐためには散歩中に飼い主さんがしっかり見張って、誤飲や誤食をしないように注意を払うことが重要です。
飼い主さんが間違ってカタツムリやナメクジに触れてしまったときも、よく手洗いしてください。
寄生虫以外にも、農薬や除草剤が散布されている植物やタバコなどの危険物の誤食誤飲に気をつけてくださいね。