ペットのワンちゃんとキスをすると、その唾液に含まれているヘリコバクター・ハイルマニイ菌が人に感染して胃がんになるという説が流れています。
胃がんになる人のほとんどが犬を飼っているという内容の記事も散見しますが、これらの情報は本当なのでしょうか?
注目されるヘリコバクター・ハイルマニイ菌
ヘリコバクター・ハイルマニイ菌とは
問題になっているのがヘリコバクター・ハイルマニイ菌です。
ハイルマニイが人間の胃の中にいることが発見されたのは約30年前の1987年のことです。
ハイルマニイはピロリ菌の亜種で、胃MALTリンパ腫という胃がんの一種を発症させると考えられています。
ピロリ菌の感染率は日本人の場合は男女平均で約36%です。
ピロリ菌は胃炎や胃がんを引き起こすリスクが指摘されていて、医療関係者は保菌の有無を検査して、できれば駆除したほうがよいと勧めています。
その一方で、日本人のハイルマニイ罹患率は0.1%であると報告されています。
ある大学の研究室によると、日本全国のピロリ菌陰性患者で胃MALTリンパ腫を患っている人の60%がハイルマニイに感染していたことがわかったということで、この研究室によれば、現状わかっている唯一のMALT罹患の危険因子が、「ペットを飼っていること」だと指摘しています。
犬の胃がんの原因はヘリコバクター・ハイルマニイ菌ではない
ハイルマニイが犬の胃に70~80%の割合で定着しているのは確かのようです。
しかし、犬が胃がんになる確率はそれよりもはるかに低いので、ハイルマニイは犬のがんの主な発生原因にはならない可能性が高いと考えるのが自然です。
人間への影響を考えてみると
小さい子どもは危険か?
それでは、犬のがんにはならないけれど、人間のがんの原因になるということなのでしょうか?
好奇心旺盛な子どもは犬やねこを見つけるとすぐに触ろうとするし、動物の唾液がついたおもちゃなどを無邪気に舐めてしまうこともあります。
先述の大学チームは、子どもは免疫が不完全で胃酸が弱いので、ハイルマニイの感染にとくに注意すべきだとしています。
しかし現実問題として、ペットを飼育する家庭の子どもに胃がんの発生率が高いというデータはありません。
デマか真実か
現在、日常的に犬とキスをしている人間は地球上に何億人もいるし、過去にも何十億人もいたでしょう。
しかし、今のところペットの犬とのキスで大勢の人が胃がんに罹患したという信頼できるデータはありません。
犬の罹患率が70~80%である一方で、日本人のハイルマニイ罹患率が0.1%とされていることからも、ハイルマニイが犬から人へ感染するというのは、もしあったとしてもごくまれな現象であることが想像されるばかりか、もしキスで感染するのなら、犬とのキスだけでなく、人間同士のキスによって感染すると考えるのが自然です。
もしそうであれば、人間のハイルマニイの感染率は爆発的な大きな数値になっているはずなのではないでしょうか。
まとめ
ヘリコバクター・ハイルマニイ菌が犬の胃に70~80%という高い割合で定着していることは確かですが、犬とのキスで人間にハイルマニイに感染するという科学的な根拠はなく、そもそも、ハイルマニイが犬の胃がんの大きな原因でもないことも推測できます。
おそらく、犬とのキスで、ごくまれに人間がハイルマニイに感染することがあり、胃がんを発症するリスクがあるという程度が真実なのではないかと思うのです。
けだまじるしとしては過剰に恐れる必要はないと思うのです。