「犬は人間の14倍カルシウムが必要」などといった情報がひとり歩きして、カルシウム過多になっている犬が多いようです。
カルシウムの摂りすぎによって思わぬ健康トラブルになる場合があります。
正しい知識でワンちゃんを飼育しましょう。
カルシウムの役割
動物はみな、カルシウムなくしては生きていけません。
カルシウムの一番重要な役割は筋肉を動かすことと、神経の伝達です。
体内のカルシウムが低下すると心臓も肺も動かなくなってしまいます。
カルシウムは骨に貯蔵される
カルシウムは生きていく上で非常に大事な物ですから、不足した場合の予備として体内に多くのカルシウムが貯蔵されています。
カルシウムの貯蔵庫は骨です。
骨の主成分はリン酸カルシウムで、血液中のカルシウムが不足すると喉の部分にある上皮小体という分泌腺からホルモンが分泌されて骨のカルシウムを血液中に放出して補います。
これが継続的に続くと骨がもろくなり、簡単に骨折をするようになります。
カルシウムが不足すると骨折しやすいというのは、この事実に由来しています。
カルシウムの過剰摂取でなにが起こるか
したがって、生命活動を維持するためには適量のカルシウムを食べ物から取り込むことが必要なのですが、過剰摂取すると健康に悪い影響を与えることがわかっています。
カルシウムの過剰摂取で便秘になる
カルシウムの摂りすぎによって、便秘を引き起こすことがよく知られています。
たまにおやつで骨をあげると、次の日のウンチがガチガチになったという経験がある飼い主さんもいるでしょう。
カルシウムを摂りすぎると、吸収しきれなかったカルシウムは便として排泄されます。
そのためにウンチが固くなり、便秘気味になるのです。
カルシウムの過剰摂取で骨折しやすくなる
生後6か月までの成長期に必要なカルシウムを与えないと、骨に異常が出ることは昔から知られていましたが、近年、高カルシウム食を与えても同様に骨に異常が出るという報告が多くの栄養学者から出てきました。
骨を構成する原料には、カルシウムのほかにリンがあります。
血液中のカルシウム濃度が高くなると、骨中のリンを溶かして体内バランスを一定に保とうとする作用が働きます。
このような状態が継続すると、だんだん骨が弱くなっていくのです。
ある動物病院では、通常は高齢犬が発症する変形性脊椎症について、若齢での発症例が複数あり、飼い主さんに確認したところ、いずれも子犬の時期にカルシウムの粉を食事に混ぜて与えていたことがわかったそうです。
カルシウムの過剰摂取で尿結結石になる
必要な分以外のカルシウムは、腎臓を通して尿中に排泄されますが、排出しきれずに腎臓に蓄積したカルシウム分が尿石症の原因になることがあります。
カルシウムの過剰摂取はさらに重大な病気の原因にもなる
カルシウムの過剰摂取は、肥大性骨形成異常、股関節以上、背骨の変形など、深刻な骨の病気を発症するリスクがあります。
詳しい仕組みはまだよくわかっていないようですが、過剰なカルシウムが発育中の骨に貯蔵されて異常な骨が形成されるという説が有力です。
まとめ
子犬の成長促進によいという理由で、子犬の販売とセットでカルシウム剤を買わせるペットショップがあるそうです。
かつてドッグフードの品質がよくない時代には、カルシウム剤が必要だったのかもしれませんが、現在はまったく必要ありません。
今の時代のペットには栄養不足はないといわれています。
フードやおやつの食べ過ぎや、サプリメントの与えすぎなど、ほとんどが過剰摂取によって発生している問題です。
健康に問題のない犬であれば、バランスのいいドッグフードだけを与えていれば、基本的にそのほかの食べ物を与える必要はないのです。