日本の法律で予防接種が義務づけられているのは狂犬病ワクチンだけです。
そのほかに、犬ジステンバーや犬パルボウイルスなど5~9種類の感染症を予防できる混合ワクチンがあります。
混合ワクチンは狂犬病のワクチンと異なり任意接種であり、接種しないことによる法律上の問題はありませんが、予防医療の観点からは有効です。
混合ワクチンの効能
混合ワクチンが対象としている感染症には、一度発症すると救命することが難しい病気が含まれています。
数十年前に比べると、家庭で飼育されるペットの生活環境は格段に向上し、動物医療の進歩や飼い主さんの意識向上によって予防医療が拡大しました。
それに伴ってこれらのウイルス性疾患の発生率は年々減少し、現実的に日本国内では狂犬病は根絶されました(予防接種は義務化されていますので注意)。
昨今、インターネットを中心に予防接種の必要性を疑問視するような情報が出回ることもありますが、動物医療の現場では、ワクチンを接種していなかったためにウイルス性疾患に感染して命を落とすペットが確実に存在します。
飼い主さんが後悔しないためにも、「けだまじるし」では任意の混合ワクチンの接種を推奨します。
混合ワクチンの種類
混合ワクチンには、コアワクチンとノンコアワクチンが含まれています。
コアワクチン
混合ワクチンのうち、ジステンパーウイルス、パルボウイルス、アデノウイルス感染症に対する3つのワクチンをコアワクチンといいます。
ノンコアワクチン
レプトスピラ、パラインフルエンザ、ボルデテラ、犬コロナ、ボレリアの5種で、比較的危険度が低いウイルスを対象にしたワクチンや、生活環境やライフスタイルに合わせて必要になるワクチンがノンコアワクチンです。
混合ワクチンの内容
コアワクチンは致死率が高い病気に対するもので、高い予防効果が確認されています。
一方、ノンコアワクチンは比較的必要性の低いものも含まれます。
混合ワクチンは、コアワクチン3種とノンコアワクチンの組み合わせによる合計5~9種の混合が一般的です。
ワクチンの接種サイクル
子犬の場合、通常はペットショップやブリーダーで最初のワクチン接種を受けているはずですが、ワクチンの種類についてはそれぞれ確認しておきましょう。
家に迎えてからは、生後16週齢ぐらいまでに2~4週間隔で数回接種をおこなうことが推奨されています。
その後は、毎年1回づつ、狂犬病ワクチン(義務)と混合ワクチンを接種するスケジュールです。
ワクチンの後遺症について
副作用が気になるのでワクチン接種はしたくないという飼い主さんがいるかもしれませんので、ワクチンの副作用についてお伝えします。
たしかにワクチンの副作用の可能性はゼロではありませんが、病気になって死んでしまうリスクと比較すれば問題にもなりません。
たとえばパルボウイルスの致死率は50%ですが、ワクチン接種による副作用の発生率は軽いものを含めて0.6%だといわれています。
コアワクチンは毎年接種が必要ない場合も
狂犬病ワクチンやノンコアワクチンの効果は短く、毎年接種する必要があります。
一方、コアワクチンは最新の研究で、これまで考えられてきた期間よりも効果が長持ちすることがわかってきました。
免疫力は数年から一生涯持続する場合もあるようで、その場合は免疫力が弱まったワンちゃんのみ、追加でワクチン接種すればよくなります。
接種したワクチンの効果がどれぐらい持続するのかはワンちゃんの個体差によるため、動物病院で定期的に抗体検査をおこなうことをおススメします。
世界小動物獣医師会のガイドラインによれば、10歳以下の犬について3年ごとの抗体検査が奨励されていますが、詳しくはかかりつけの獣医師さんに相談してみてください。
ただし、実際の混合ワクチンはコア3種とノンコアの組み合わせで5~9種混合というケースが多く、コアワクチンの必要がない場合、ノンコアワクチンのみの接種が可能かどうかについては確認する必要があります。