元気な小型家庭犬として根強い人気があるヨークシャーテリアですが、平均寿命は15歳と長寿である半面、先天的疾患の多い犬種でもあります。
ヨークシャーテリアの歴史
ヨークシャーテリアは、19世紀ごろイギリス・ヨークシャー地方でネズミを退治するための犬として誕生しました。
当時は今よりもずっと大きく体重も5kg前後で毛質も硬かったのですが、その後小型化がすすみ、被毛も絹糸のように滑らかになり「動く宝石」と呼ばれるようになりました。
日本では「ヨーキー」の愛称で知られています。
ヨークシャーテリアの性格
ヨークシャーテリアはテリア種だけあってとても賢くて勇敢です。負けん気が強く大型犬に向かっていくこともあります。
しつけはやや難しいといわれていて、吠え癖やかみ癖がつきやすく、うまく主従関係を築けないと飼い主さんをリーダーとして認めないケースがあります。
ただし一度覚えると忘れない聡明さがあるので、きちんと訓練すればとても飼いやすいワンちゃんです。
ヨークシャーテリアに非常に多い病気
膝蓋骨脱臼(通称パテラ)
膝の皿が外れた状態になる病気で、遺伝による先天性原因が多いとされています。
腰をかがめて内股で歩く様子や跛行などの症状が現れます。軽度の場合は、自然に元に戻ることもありますが、重度のものは、手術が必要になります。
環軸亜脱臼
首を触ると痛がり、症状が進行すると体の知覚神経や四肢に麻痺がおこって起立不能になることがあります。
先天的な骨の奇形による場合が多く、チワワ、ヨーキー、ポメラニアン、ダックスなどの小型犬に多く見られます。
内科療法や固定具を使用した治療が主流ですが再発の可能性が高いようです。
僧帽弁閉鎖不全症
心臓の左心房と左心室の間にある僧帽弁が障害を起こす病気で、乾いた咳や呼吸困難、食欲不振などの症状がみられます。
完治させる方法はなく、投薬で心臓への負担を軽減して病気の進行を抑える対処療法となります。
動脈管開存症
生まれてくる前に閉じているはずの胸部大動脈と肺動脈をつなぐ動脈管が、出生後も閉じなくなる病気です。
元気がない、食欲不振、すぐ疲れる、呼吸困難などの症状がみられ、突然死を起こす危険もあります。治療は食事療法や安静療法といった内科的処置が中心で、血管拡張薬、利尿剤、強心剤のような薬物療法も並行します。
水頭症
水頭症は、脳内の脳脊髄液過剰に溜まって脳室が異常に拡張してしまう病気です。
ぼんやりしていたり、寝ている時間が多い、歩き方がおかしい、よく転ぶ、うまくたちあがれないなどの症状があり、頭蓋骨が大きく骨の薄い犬種に発症が多い傾向があります。
先天的な原因と後天的な原因のほか、頭部の外傷や、ウィルス感染による脳炎、脳腫瘍などの後天的要因で起こることもあります。
外科手術のほかに、脳圧を下げる薬剤を使用する内科的治療があります。
門脈シャント
消化管と肝臓をつなぐシャント血管の近くに異常なバイパス血管が形成されて、シャント血管の血流が滞り、肝臓に充分な栄養が行き渡らない症状を門脈シャントといいます。
先天性疾患の場合は、異常なバイパス血管を結束する手術がおこなわれます。
白内障
加齢によっておこる高齢性白内障のほか、外傷性のケースや糖尿病によって発症します。
2歳以下の犬が発症する若年性白内障は遺伝性で、ヨークシャーテリアに散見します。
視力が低下して歩行がぎこちなくなったり、よく物にぶつかるなどの歩行異常がみられるようになります。
おもに点眼薬で進行を遅らせる治療になります。
クッシング症候群
副腎皮質ホルモンの過剰分泌によって起こります。
がんやアレルギー治療のための副腎皮質ホルモンの多量投与や脳下垂体の腫瘍が原因のケースもあります。
左右対称性の脱毛や多飲多尿、過食のほか、皮膚に色素がついたり皮膚が薄くなるといった症状もあります。
副腎皮質の働きを一時的に弱める特殊な薬剤を生涯投与する必要があります。
大腿骨頭無菌性壊死(レッグ・ペルテス)
大腿骨が成長する時期に大腿骨頭への血液供給が悪くなることで大腿骨頭が壊死する疾患で、1歳未満で発症することが多く、手術が必要なこともあります。
歩行時に痛みが生じて歩き方が不自然になったり、スキップ歩きがみられます。
まとめ
ヨークシャーテリアは暑さにも寒さにも弱い犬種ですので、室内飼育が基本です。
わがまま放題に甘やかすと飼い主が召使のような関係になって問題を起こしやすくなります。小型犬だからといって運動を怠ると、ストレスになり問題行動の原因にもなりますから注意してくださいね。